人体の脳と神経ニューラルネットワークから生成AIへの流れ

人体の脳をモデルにして、人工ニューラルネットワークが作られ、人工知能知能へと発展していくことを表した図です 脳科学
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ここでは、人体の全身に広がる神経細胞がどのように情報を伝達するのか、そしてその中心である脳の構造と各部位の機能について、詳しくわかりやすく解説します。特に、大脳の中心部である前頭葉とその言語処理機能に焦点を当て、それが大規模言語モデル(LLM)という人工ニューラルネットワークとどのように関連しているのかを概観します。

このサイトでは、根拠としている外部関連リンクを多く配置しています。図や写真が先ず参考となりますので参照をお勧めします。

人体における神経のネットワークと脳

神経の細胞と働き

人体における神経のネットワークと脳について説明します。まず、神経の細胞とその働きについてです。人体における神経系を構成する細胞は、神経細胞(ニューロン)グリア細胞(神経膠(こう)細胞)の2種類があります。グリア細胞は神経細胞に栄養を運び、さらに神経細胞が正常に機能するのを助けています。

私たちは毎日生きて活動しています。見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる、考えるなどの活動。また、呼吸し、食べ、歩き、寝るなどの活動。さらに、意識しなくても肺、心臓、胃、腸などの臓器の活動があります。これらの活動が生きている限り続くのは、すべて体内に網の目のように張り巡らされた神経細胞のネットワークがあるからです。

外部リンク

神経|からだとくすりのはなし|中外製薬 (chugai-pharm.co.jp) https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/karada/karada022.html

全身の神経網 – からだと病気のしくみ図鑑 – goo辞書 https://dictionary.goo.ne.jp/word/medical/全身の神経網/

また、神経のネットワークにおける情報は、電気的な信号により伝わっていきます。この電気的な信号を神経インパルスといいます。そして、この個々の神経細胞を「ニューロン」といいます。脳にはニューロンが1000億個あると推測されています。このニューロンは情報伝達のための構造を持っており、ニューロンからニューロンへの情報伝達のネットワークが全身に広がっています。これを「ニューラルネットワーク」といいます。

この1個の神経細胞から、「軸索(じくさく)」という通常1本長い突起が出ていて、情報を発信する役目を担っています。また、1個の神経細胞から複数の「樹状突起(じゅじょうとっき)」が出ていて、多数に分岐し、他の複数のニューロンからの情報を受け取る役目を担っています。

軸索の先端は、他の神経細胞の樹状突起に結合します。この結合部を「シナプス」といい、この結合部の間隙で、軸索の先端である「シナプス前終末(pre-synapse-terminal)」から化学伝達物質が放出され、それがシナプス間隙に拡散し、樹状突起の「シナプス後終末(post-synapse-terminal)」の受容体と結合することにより情報が伝達されます。

化学伝達物質はメッセージ物質として、数十から100の種類があります。樹状突起のシナプス後終末に対して、電気の発生を促す「グルタミン酸」、脳内一斉に電気を発生させる「ドーパミン」等様々なメッセージ物質があります。

テンションが上がった時等に出されるこのメッセージ物質「ドーパミン」が放出されると、電気信号の伝わり方が活発になり、脳全体の神経細胞が一気に活性化します。ドーパミンは今までお聞きになった人も多いと思いますが「幸せホルモン」という人もいます。コーヒー飲むと腸壁からドーパミンの分泌を増やす効果があることが、ハーバード大学での研究で実証されているそうです。NHKスペシャルの放送では、「脳のひらめきの正体」がメッセージ物質ドーパミンの放出による脳全体の神経細胞の活性化であるとしています。

次の動画は、14 億のシナプスと 800 万のニューロンを持つ哺乳類の視床皮質システムをシミュレーションしたものです。シナプスの神経インパルスの発火を光で表しています。

https://www.youtube.com/watch?v=u28ijlP6L6M&t=43s
Artificial Brain Simulation – Thalamocortical System, 8 Million Neurons – 1.4 Billion Synapses

内部リンク

ドーパミン 運動と海馬の関係 スマホや在宅勤務と脳の健康 すやすやと睡眠しているとタツノオトシゴの形をした海馬が健康になる様子をイラストにしています

軸索や樹状突起の神経線維の中は電気現象として情報を伝え(これを伝導という)、シナプス間隙においてはメッセージ物質により化学的に伝えます(これを伝達といい伝導と区別されています)。

このシナプスにおける情報の伝わりやすさはいつも一定ではなく、入力の強さにより変化します。これを「シナプス可塑性(かそせい)」と呼び、記憶や学習と関係があると考えられています。

中枢神経と末梢神経

次に、中枢神経と末梢神経について説明します。人体における神経のネットワークは、「中枢神経(ちゅうすうしんけい)」と「末梢神経(まっしょうしんけい)」に分けることができます。

中枢神経は「(のう)」と「脊髄(せきずい)」です。全身に指令を送る神経ネットワークの中心的役割を担っています。大事な中心部となりますので、脳は頭蓋骨(とうがいこつ)に、脊髄は脊柱(せきちゅう)によって守られています。

末梢神経は、中枢神経と人体の諸器官に分布する神経とを結び、情報の伝達をおこなっています。

神経の機能について分類すると末梢神経に、「運動神経」と「自律神経(じりつしんけい)」があります。運動神経は脳からの命令を受けて、骨格筋を働かせて運動を行う神経です。自律神経は呼吸、消化、血液循環などを無意識に調整している神経であり、反射的に内部環境を維持しています。

自律神経には「交感神経(こうかんしんけい)」と「副交感神経(ふくこうかんしんけい)」があります。交感神経は活動・緊張させる働きであり、副交感神経は休憩・リラックスさせる働きです。

また、知覚神経は、目耳鼻舌や皮膚、内臓からの刺激を脳に伝える働きをしています。

脳の構造と機能

次に、脳の構造と機能について説明します。人体における神経ネットワークの中枢である脳は、思考、感情、記憶、感覚、運動など、人間のあらゆる活動の中枢です。成人で約1400g程度です。脳は体の内部機能に指令を出します。また、知覚から神経により脳に入力される電気信号と脳にある情報を統合して、知覚、思考、記憶を形成します。そして、脳は、自己認識と言語能力を獲得し、世界を移動することを可能にします。

外部リンク

ヒトの脳 | 解剖と機能 (visiblebody.com) https://www.visiblebody.com/ja/learn/nervous/brain

脳の構造 | BSI Youth (riken.jp) https://bsi.riken.jp/jp/youth/know/structure.html

脳は左半球と右半球に分かれており、大脳小脳脳幹間脳、の部位から構成されています。また新皮質、古皮質、旧皮質、大脳辺縁系の4つの機能から構成されています。

それぞれの半球が反対側の身体の運動や感覚情報を処理しています。たとえば視覚に関しては右側の視野の映像は左脳で処理され、左視野の映像は右脳で処理されています。それ以外には、多くの人の言語中枢は左脳にあり、右脳は非言語的、空間的、映像的であると考えられています。

「脳」の分類

  1. 大脳 意識的な体験、思考、言語、記憶、感覚、運動など、人間らしい高度な精神活動
    • 前頭葉 思考、計画、意思決定、情動の制御、運動など
      • ブローカ野 運動性言語中枢
    • 頭頂葉 感覚(触覚、温度感覚、痛覚など)に関する情報を統合し、処理する
    • 側頭葉 聴覚情報、嗅覚情報、長期記憶の保持、言語の理解
    • 後頭葉 視覚情報処理の中枢
      • ウェルニッケ野 聴覚性言語中枢
  2. 小脳 運動の調整、体のバランスを維持する平衡感覚、姿勢の維持
  3. 脳幹 呼吸、心拍、血液循環、体温調節、運動、食欲、睡眠など
    • 中脳 視覚や聴覚情報の伝達、眼球運動、姿勢制御など
    •  大脳と小脳を連絡する神経経路など 呼吸リズムの制御を補助する
    • 延髄 呼吸、心拍、血圧などを調節 嚥下、咳、くしゃみなどの反射
  4. 間脳 感覚情報の中枢、自律神経系の調節、ホルモンの分泌など
    • 視床
    • 視床下部

大脳」は脳の中で最も大きな部位であり、意識的な体験、思考、言語、記憶、感覚、運動など、人間らしい高度な精神活動を司っています。大脳は、その表面の切れ込みである脳溝によってさらに大きく4つの領域、前頭葉頭頂葉側頭葉後頭葉に分けられます

前頭葉は思考、計画、意思決定、情動の制御、運動などをつかさどり、人間にとって最も高度な精神活動の中枢です。前頭葉には、言葉を話すために必要なブローカ野という運動性言語中枢が存在します。

頭頂葉は体の末梢神経から得られた感覚(触覚、温度感覚、痛覚など)に関する情報を統合し、処理する役割を担っています。頭頂葉は、前頭葉の運動野と連携して、身体を自分の意志通りに動かす随意運動を制御しています。

側頭葉は全体的な聴覚情報、嗅覚情報、長期記憶の保持、言語の理解などをつかさどります。側頭葉には、言語の理解に必要なウェルニッケ野と呼ばれる聴覚性言語中枢が存在します。

後頭葉は視覚情報処理の中枢です。後頭葉は、目から入った視覚情報を解釈し、形、色、動きなどを認識します。

小脳」は大脳の後下方に位置し、運動の調整、体のバランスを維持する平衡感覚、姿勢の維持などを司っています。小脳は、大脳からの運動指令と、感覚器官からの情報を受け取り、それらを統合して、運動のタイミングや力の入れ具合を調整する等の、滑らかで協調のとれた動きを可能にしています。

脳幹」は、中脳(きょう)、延髄(えんずい)からなり、脊髄と間脳をつなぐ役割をしています。脳幹は、呼吸、心拍、血液循環、体温調節、運動、食欲、睡眠など、生命維持に不可欠な機能をコントロールするという仕事を、決められた通りにこなしてくれている中枢です。

中脳は視覚や聴覚情報の伝達、眼球運動、姿勢制御などに関与しています。

は大脳と小脳を連絡する神経経路などが集まっています。また、橋は呼吸リズムの制御を補助する役割も担っています。

延髄は呼吸、心拍、血圧などを調節する中枢です。延髄は、嚥下、咳、くしゃみなどの反射にも関与しています。

間脳」は視床視床下部から成り立ち、感覚情報の中枢、自律神経系の調節、ホルモンの分泌などを担います。

また、大脳の表面を覆うように存在する「大脳皮質」は、脳総量の85%を占め、新皮質古皮質旧皮質に分けられます。

  1. 大脳皮質 知的活動、運動や感覚の最上部を担当します
    • 新皮質 6層からなる神経細胞で、大脳の外側部分
    • 古皮質 3から4層からなり、海馬などを含む
    • 旧皮質 生存に関わる部位

古皮質である「大脳辺縁系」は海馬扁桃体帯状回などから成り立ち、感情・本能や記憶の処理を担当します。

  • 大脳辺縁系
    • 海馬 空間学習能力、短期記憶の保持と長期記憶の固定を行っています。
    • 扁桃体 海馬からの視覚や味覚などの記憶情報をまとめて、それが快か不快か(好きか嫌いか)を判断しています。
    • 帯状回 大脳辺縁系の各部位を連絡し、感情の形成と処理、学習と記憶に関わりを持つ動機付けの重要な中枢です。

外部リンク

【基礎から学ぶ】大脳辺縁系【解剖生理学】 – PTOT国家試験対策ブログ (hatenablog.jp) https://kigyou-pt.hatenablog.jp/entry/limbic-system

大脳辺縁系 – Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/大脳辺縁系

内部リンク

大脳辺縁系 脳における海馬の役割 海馬とは すやすやと睡眠しているとタツノオトシゴの形をした海馬が健康になる様子をイラストにしています

扁桃体 運動と海馬の関係 スマホや在宅勤務と脳の健康

人体における神経のネットワークと脳のまとめ

脳の最高中枢は前頭葉

まず、脳の最高中枢である前頭葉についてです。前頭葉は、私たちが思考する力、意思決定を行う能力、感情をコントロールする力、状況を判断する力、記憶を保持する力、注意力を維持する力、そして行動を制御する力など、人間らしい高度な認知機能を司っています。この前頭葉は、大きく分けて前頭連合野高次運動野一次運動野の3つの部分から成り立っています。

さらに、前頭連合野の中にはブローカ野という部分があり、これは運動性言語中枢とも呼ばれます。言語処理、音声言語、書字、手話の産出と理解などの運動性言語に関連しています。

人体から脳に入力される情報

次に、人体から脳に入力される情報について説明します。

視覚情報は、目から視覚神経を通じて後頭葉で処理され、物体の形や色などを認識します。

聴覚情報は、耳から聴覚神経を通じて側頭葉で処理され、音の高さや強さなどを認識します。

触覚情報は、皮膚からの感触や痛み、温度などの情報が神経を通じて頭頂葉で処理されます。

味覚情報は、舌からの味の情報が味覚神経を通じて側頭葉で処理されます。

嗅覚情報は、鼻からの匂いの情報が嗅覚神経を通じて大脳の古皮質で処理されます。古皮質は、生物の進化の過程で初期段階に形成された部分です。

脳は、基本構造が変化するのではなく、新しい機能が付け加わるように進化してきました。

魚類、両生類、爬虫類では、反射や、摂食、交尾のような本能的な行動をつかさどる脳幹が脳の大部分を占めています。

魚類と両生類では、大脳には、生きていくために必要な本能や感情をつかさどる、大脳辺縁系(古皮質)しかありません。鳥類や哺乳類になると、小脳と大脳が大きくなり、特に大脳が発達し「感覚野」「運動野」といった「新皮質」が出現します。霊長類になると、新皮質がさらに発達して大きくなり、「連合野」が出現し、高度な認知や行動ができるようになります。ヒトでは、新皮質が大脳を大きく占めています。

  • 魚類と両生類 大脳には大脳辺縁系(古皮質)しかない
  • 鳥類や哺乳類 大脳が発達し「感覚野」「運動野」といった「新皮質」が出現
  • 霊長類 新皮質がさらに発達して大きくなり、「連合野」が出現し、高度な認知や行動ができる
  • ヒト 新皮質が大脳を大きく占める

人工ニューラルネットワークと人体の脳との繋がり

人工知能と脳が融合して人間が進化していくことを表した図です

最後に、人工ニューラルネットワークについて先ず説明します。人工ニューラルネットワーク(ANN Artificial Neural Network)は、人間の脳の神経回路を模した数理モデルです。これは、脳のニューロン(神経細胞)が相互接続されて情報を処理する仕組みをコンピュータ上で再現しようとするものです。人工ニューラルネットワークは、機械学習深層学習ディープラーニング)の基盤となる技術です。

この人工ニューラルネットワークから、膨大なテキストデータと高度なディープラーニング(深層学習)技術によって構築された大規模言語処理が可能となり、大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)とも呼ばれる、自然言語処理(NLP Natural Language Processing)のモデルの一つが開発されました。

そしてこのLLMをさらに応用して、人と自然な会話ができるように特化したChatGPT(Open AI社が提供する技術)が2018年に公開され、その後バージョンアップを繰り返し進化し続けています。

そして2024年現在は、新しいテキスト、画像、音楽、動画などのコンテンツ・メディアを作り出すことができる生成AIへと進化しています。また、その生成AIが商業ベースに乗って、世界中に広がりつつあります。

人間の脳は、神経細胞が相互に接続されて情報を処理する複雑なネットワークです。人体の最高中枢である大脳の前頭葉、その前頭連合野にあるブローカ野が、言語処理をしていることと、LLMが生成AIへと発展してきたことを併せて考えると、納得がいきます。

しかし、言語を処理する能力があるからといって、それが人間の脳を完全に模倣できるわけではありません。また、汎用人工知能(AGI Artificial General Intelligence)、更に人工超知能(ASI Artificial Superintelligence)を実現するための道のりはまだ遠いと思われます。それよりも、特化型AIが商業的に利用され、新たな技術開発が進むことで、人間の進化が促進される可能性があります。

これらの知識を持つことで、私たちはAIの可能性と限界を理解し、その発展を適切に有効に活用していくことができます。

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